泣いて、笑って強くなれ


だけど……


『それって……俺に逃げろっていってんの?』


この現実から逃げろと、言っているようにしか聞こえない。


『優愛から逃げろって、今お前は言ってんの?』


俺がそういうと、悠里の顔から笑顔は消えた。


『お前はいいやつだよ。本当に。幼馴染の俺が言うから間違いない』

『……ならっ……』

『だけど、それとこれとは違う。

優愛は……特別なんだ』

『……なんで?……なんであの子とこそんなに……っ!』

『……そんなの、考えたこともなかった。

ただ……、気づいたらあいつのこと考えてる。あいつが笑ってれば、俺はそれでいいって思えるから』


そういって、俺はふと夜空を仰いだ。

きっとこの空の下に優愛もいるんだろう。

踏ん張れよ。

負けるなよ。

俺がいなくても、悠里がいなくても、その空っぽの記憶で前に進めよ。

きっと、大丈夫。

疲れたら少し休めばいい。

そしてまた進めばいい。

もしまた逢えたなら一緒に笑おう。

この空の下で。


『……陽向にはかなわないな……』


隣で悠里がそうつぶやいたのが聞こえた。


満天の星空の下、小さな島に住む俺らはゆっくりと帰り道を歩いた___________。


















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