泣いて、笑って強くなれ
「_____なぁ、母さん。……俺、どうすればいい?」
早朝の4時。
俺は墓場に立っていた。
冬場のこの時間帯は南の島とは言えど寒い。
だけど、この時間なら誰もこんなところにはいない。
だって辺りはまだ暗いから。
怖がって誰もこんなところには近づいたりしないだろう。
だからといって、死んでしまった母さんが俺のこの独り言に答えてくれるはずもないわけであって。
俺は小さくため息を漏らした。
「会ってやってよ」
……え?
後ろから聞きなれない声がした。
振り向けば、知らない俺と同じくらいだろうか。
男がこちらに近づいてくるのがわかった。
向こうはほのかな明かりを持っていてくれたお陰で何となく顔は見えた。
だが、見たことはない。
「……お前、誰?」
そう、そのほのかな明かりに向かって問いかけると、その男はかすかに笑ったように見えた。
「俺?……内緒っ!」
そういって、俺の前で立ち止まったその男。
この島の男なら俺は知っているはず。
だけど、知らないってことはこいつはここの人間じゃない。
ここの人間じゃないってことと、さっきの発言からして考えられることは……
「優愛の知り合いか?」
それしか考えられない。
俺がそういうと、そいつは満足そうに笑ったのがわかった。
大分外も明るくなってきて、淡いその光もお役ごめんの時間が近づいてきている。
「流石。カノジョに似て鋭いね、陽向くん」
そういって、その男は手に持っていた明かりを消した。
消したがお互いのかおがわからなくなることはない。
だって、朝日が丁度顔を出したから。
「俺になんのよう?」
俺がそういうと、その男は待っていましたと言わんばかりに、満面の笑みを浮かべた。
「そうそう、その言葉を待ってたんだよ」
「……」