泣いて、笑って強くなれ
「陽向くんだよ。優愛ちゃん」
「「え!?」」
ばあちゃんからのまさかの告白に驚きを隠せない私たち。
自然に言葉が重なった。
陽向。
私はその聞いたことのある名前を、記憶のなかから探る。
懐かしい響きの名前。
そう言えば、昔よくその名前を呼んでいた。
いつも、この家に遊びに来た男の子。
『_____陽向ー!』
「……っ!」
思い出した。
昔、お母さんとお父さんは仕事で忙しくて私は、ばあちゃんに育てられていた時があった。
そんなときに友達になったのが、隣の家にすむ一人の男の子。
橘 陽向(タチバナ ヒナタ)。
詳しい思い出は何故か、思い出すことはできない。
だけど私の曖昧な記憶からすると、陽向はチビで色白で可愛いイメージ。
ばあちゃんの言葉を借りるけど、時間って本当に怖いと思う。
だって、今の陽向はTHE・男!って感じだよ。
紗英とか里咲が好きそうな顔してる。
長身で、適度に日に焼けてて、少し茶がかかった髪。
それに加えて、この異常な顔の整いかた。
うん。
これを世はイケメンと呼ぶのだろう。
「優愛?」
扉の前で一時停止状態の陽向。
何やらすごく驚いた顔をしている。
そうか。
向こうも私の変わりように驚いてるのか。
そんなに、私変わったのかな?
ばあちゃんは私見てすぐに私だってわかったみたいだけど。
「お前、変わってねぇーな??」
……。
あ、そっちね。
ってちょっと。
「なんで人のこと指差しながら笑ってんのよっ!」
「え?だって……うはははっ!」
そう、お腹を抱えて大笑いし出したこの失礼きわまりない、コイツ。