泣いて、笑って強くなれ
「……っ!男なら告白のとき、最後にクエスチョンマークなんかつけないでよっ!」
「……お前、口だけ達者なのは記憶なくしても戻ってもかわんねぇな~……。
ってあっ!お前、俺のお気に入りのシャツ!涙でグチョグチョじゃねぇか!」
「うるさいなぁ。抱き締めたのはそっちでしょ~!?」
そういって、私と陽向が言い合っていると、お互い目があった。
すると、陽向の顔がぐっと近くなってきて……
ほんの一瞬、唇が合わさる。
そして、離れたと思ったらお互いの顔を見た瞬間に笑みが溢れた。
ほら、笑えた。
ねぇ、おばさん。
天国からちゃんと見てる?
泣いたあと、ちゃんと笑えてるよ、私たち。
「きっと俺ら、こうやって強くなるんだな」
そういって陽向は、あのキラキラした笑顔で笑った。
「うん。そうだね」
私がそう言うと、私たちは再び唇を合わせる。
ここまで来るのは大変だったね。
辛いってもんじゃなかった。
だけど、たくさんの経験を積んで、泣いて、笑っていまの私が、いまの私たちがある。
きっと、まだまだこれから辛いことはたくさんあると思う。
いや、あるに決まっている。
でも、きっと陽向。
あなたとならもう大丈夫だと思うの。
『陽向。いつも太陽の方を向いて。前に進むのよ。
みんなの光になるの』
おばさんは昔そう陽向にいっていた。
陽向。
その名前はあなたにぴったりだと思う。
「ねぇ、陽向」
「ん?」
「おばさんに……会いに行ってもいいかな?」
「……。ああ、母さんも喜ぶ」
陽向が私のてを引いて歩き出す。
前に進み出すのには少し時間がかかりすぎたかもしれない。
だけどいま確かに私は前に進めてるよ。
この島はあの頃となにも変わらない。
空も、鳥も、草も、花も。
みんなみんな、優しく迎えてくれる。
そのなかで人は泣き、そして笑うだろう。
私たちと同じように。
そしてみんなみんな、前の自分よりも少しだけ強くなる。
おばさんはきっと私たちにこういいたかったんだと思う。
__________泣いて、笑って強くなれ
END.