泣いて、笑って強くなれ

「……っ!」


たかが服ごときで、私のこれまでの生き方を見破られたかと思った。

他人のめばかり気にしていた私にばあちゃんは堂々としろと言う。

その言葉がなんだか私にとっては宝物みたいに思えた。

私は笑顔でばあちゃんに頷いた。


「ばあちゃん、ありがとう!!」


私がそういうとばあちゃんはくしゃくしゃな笑顔で笑ってくれる。

それがとても愛しく感じられた。

心がとても温かくなった。

それはとても穏やかな気分だった。

自然に笑うことが出来ている。

自分でもそれは分かった。













「ばあちゃん!私、いってくるね」

「ああ、たのしんでらっしゃいね」


私はばあちゃんに一言そういうと、ゆっくりと扉を閉めて玄関へと向かった。

陽向は私を迎えに来るっていってたけど、とりあえず家の前で待ってよう。

時間まであと5分ある。

だけど、なんだか夜の空気に触れたくて私は家を出た。

生暖かな空気が私を包む。

潮の香りが微かにする。

幼い頃、ここで育った私。

長年東京の方にいたとはいえ、この香りは覚えている。

夏のにおい。

懐かしいにおい。

私はそれをゆっくりと吸い込んだ。

都会では決してこんなことはしない。

空を仰げば満天の星空。
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