泣いて、笑って強くなれ


きれいだと思った。

周囲に灯りは少ないからよく星が見える。

天の川も、夏の大三角もはっきりと見える。

田舎なんてって思ってた。

確かにケータイの電波はないし。

テレビのチャンネルも少ないし。

おしゃれなカフェもない。

だけど、この場所は私に温かかった。

確かにここには私の居場所があった。


「____優愛!」


背後から聞こえたもう聞きなれた声。

夏の夜によくその声は響いた。


「やっときたよ」


そういって振り向くと、ニカッと陽向は笑った。

その笑顔に私の心は温かくなる。


「行こうぜ。こんな田舎だから規模は小さいけれど結構楽しいから」


そういって、陽向はなんの躊躇もなく私の手首をつかんだ。

ドキッとなった私の心臓。

……だけどこれはもしや……。


「走るぞ!」

「……え?」


私の予想通り陽向は私の手首をつかんだまま勢いよく駆け出した。

夏の夜風が私の頬を撫でる。

よかった。

今日はヒールなんて履いてこなくて。

走っても走っても空気が気持ちよかった。


___『優愛。お前は俺が守るから』


「……っ!」


ふと脳裏によぎった声。
< 23 / 115 >

この作品をシェア

pagetop