泣いて、笑って強くなれ


「ってかさ、優愛。相川先輩に前告白されてたでしょ?」


放課後のこと。

紗英と私は教室で2人きり。

委員会で仕事をしている里咲を2人で待っていた。

そんな静かな教室で紗英がケータイを触りながらそんなことを私に聞いてきた。

相川先輩っていうのは1つ上の先輩。

私たちの代からは結構かっこいいなんて言われてて人気もある。

サッカー部のエースで勉強もできる。


「ああ、振ったよ。好きじゃないし」


告白された事実は否定しない。

だって、紗英の持ってくる情報はいつも確実だから。

否定したって、嘘ってばれたときには確実にはぶられる。

ならば、ここで潔く白状したほうがいい。

紗英は、私が少しちやほやされている先輩に告白されたくらいで私をハブいたりするほど心は狭くない。


「ふーん。優愛、モテるのになんで誰とも付き合わないの?」

「好きな人なんていないし」

「……ああ、そう。

あ、聞いてよ。最近氷室先輩がさぁ~……」


そういって、紗英は話を変えて、自分の彼氏の話をしだす。

すこし、ほっとする私。

そして、私は黙って紗英の彼氏の話をただうなずきながら聞いていた。


こうやって、私の高校生活は過ぎて行った。

もう、私は高校2年生。

初恋も知らない。

ただ、時が過ぎていってしまった。



明日からは夏休みが始まる。

高校生は皆うきうきして彼氏とか友達とどこへ出かけるか計画を練る。

紗英も、彼氏の氷室先輩とデートで旅行に行くらしい。

里咲も家族で海外旅行にいく、なんて言っていた。


< 4 / 115 >

この作品をシェア

pagetop