泣いて、笑って強くなれ


「お前がいるせいでナツ相川先輩に振られちまったじゃねえか。どうしてくれるんだよっ!」


そうやって、数人の女の子たちの囲まれていたのは紛れもなく渚だった。

だけど、渚は何の反応もなくただただ本を読んでいるように見えた。

他人にはそう見えるかもしれない。

だけど、俺にはわかるんだ。

なあ、渚。

お前、なんて顔してんだよ。

俺がほっといたせいで、渚は大丈夫だって勝手に決めつけていたせいであんな顔させちまってるんだって、やっと気づいた。

そこで体が勝手に動いた。


「ちょっと、そこの女の子」


そういって、俺はドアのところに立って、そのドスのきいた声を出していた女の子を手招きして呼んだ。

俺がその子を呼んだ瞬間、渚の周りを囲んでいた女の子たちは、普通の女の子へと早変わりする。

キャッキャっと笑いあう。

まるでカメレオン。そう思わずにはいられなかった。


「あの……先輩。なんですか?」


そういって、俺のそばに来て上目使いを巧みにこなすこの女。

名札を俺はその間にちゃんと確認する。

えっと、亀田(カメダ)ってのか。


「亀田ちゃんさ、放課後暇?」


俺がそういって得意の作り笑顔でニコっと笑うと、亀田はおどろいた表情を見せてから「はいっ」と、女の子らしい返事をした。

多分そこからだと思う。

お前を俺は避けた。

これ以上俺のことでお前の苦しむ顔なんか見たくなかったから。

男なら本当は好きな女を体張って守るのが正解だと思う。

だけど、俺にそんな勇気なんかなかった。

ただ、自覚していた周りよりも少し整った容姿を利用してお前を何とかあの取り巻きから救ってやりたいと思ったんだ______________。













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