泣いて、笑って強くなれ
「……そう」
私はちょうど足を止めた。
ここだ。
あの時と何も変わっていない。
あたりまえだ。
あの時のままなんだから。
変わったのは私だけだ。
「……大きな家」
渚が隣で立ち尽くす。
私はそんな渚にかまわずにゆっくりとその扉を開けた。
やはり鍵はかかっていなかった。
扉を開けた瞬間、懐かしいあの匂いが鼻についた。
おばあちゃんのあの匂いがまだここには残っている。
何故か急に涙が出そうになって私はあわててぐっとこらえた。
その瞬間だった____________。
「____優愛……」
背後から声がした。
懐かしい声だった。
私の背中がなぜか熱くなるのが分かった。
振り向くのが怖かった。
私は声の主が誰だかはもう知っている。
間違えるはずがない。
「……悠里……」
私はそう小さく言って……ゆっくりと振り返った。
私がここに初めて来たとき一番に仲良くなった女の子。
私の親友だった。
あの頃は短髪だった黒髪も今になってはきれいに伸びて風に揺れている。
身長もあの頃よりはすごく伸びた。
だけど、整った顔立ちは相変わらず。
隣で渚がぺこりと頭を下げたのが分かった。