泣いて、笑って強くなれ

「相川先輩とデート、この冬休みはできないね?」

「ふふっ、優愛、そんなこと気にしてたの?いいの。カズくん、この冬は筋トレたくさんして、全国来年こそは行くんだって言ってたから。

どっちにしろ、私はほっとかれてたしね」


そういって、渚は笑って、私の頭を優しく撫でた。


「今は自分のことだけ、考えな?

だけど、一つだけ、優愛に聞きたいことがあるの」

「ん?何?」

「……優愛さ……。

陽向君のこと好き?」

「……っ!」


思ってもない質問だった。

だから、言葉が詰まってうまく声を出すことが出来なかった。


「もちろん、友達とかそんな好きじゃなくて、恋愛感情としてね」


そう、渚は付け加えたが、そんなことはもうわかっている。

大体女子が男子の名前を挙げてそう聞くときは、恋愛感情に関してだ。

本当は、もう気づいていた。

自分の気持ちに。

あの記憶の中にもその感情は紛れ込んでいた。

だれけど、私はあのとき、その感情までをも消し去ってしまっていた。

必要ないと私の脳が自己判断したんだろう。

だけど、あの夏、陽向のことは私は覚えていた。

陽向自身を消すことはできなかった。

大きすぎたんだ、きっと。

陽向を消したら、私が私でなくなるから。

消せなかった。

消せないまま再開してしまった。

そして、記憶をなくしたままの私も__________。


「好きになってしまった……。本当はいけないってことが分からないまま」


今ならわかる。


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