泣いて、笑って強くなれ
私の体じゃない。
「……前にも言ったでしょ?」
渚がそういって、急に私の胸倉をぐいっとつかんで顔をぐっと近づけてきた。
「優愛は優愛なの。ほかの誰でもないの。
この手足は優愛のものであって、陽向君のお母さんのものではないの。それを助けてもらった恩人に自慢して何が悪いっ!」
「渚にはわかんないよ、私の気持ちなんてっ!」
「そうだよ、わかるわけないじゃん。優愛みたいな境遇のやつ2人いるほうが珍しいよ」
「じゃあ、そんなこと言わないでよ。こんな体、一生おばさんなんかにみせられない。見せたくないっ!」
「……っ!バカじゃな……ふぐっ!」
渚の声が途中で途切れた。
何だと思って、目線をもっと上にあげた私。
「……うるさいお前ら。近所迷惑」
そういって、渚の口を自分に手でふさいだ人物。
それは……
「……っ!……なんで……」
何で今なの?
渚もその人のことを横目で見て、目を見開いていた。
その人は、ゆっくりと渚の口元から自分の手をどける。
そして、座っていた私の目線に合うようにゆっくりと私の目の前でしゃがみこんだ。
「ひ、なた……」
ゆっくりとその名前を呼ぶ。
すると、むこうは少しだけ笑う。
「元気そうだな」
そういって、私の頭を優しく撫でた。
そんなに私に優しくしないで。
私は、あなたにひどいことをしたのに。