揺れる、黒。
じゃあねえ、と、北原さんがキラキラした目を僕に向け、ずい、と身を乗り出す。
北原さんの短い髪が揺れた。
「夕陽撮ろう!」
夕陽、ですか。と、思わず僕は言う。
夕陽なら、夕陽が綺麗に見える日にはいつも部室から撮っていた。
「そうじゃなくて!」
と、北原さんが言う。
「土手から撮るの」
「土手?」
「そう! 昨日ね、回り道して土手を通って家に帰ったの」
「なんで回り道したの」
「なんとなく。土手を通って帰るのって青春ぽいじゃない? なんとなく、青春したい気分だったの!」
北原さんはときどき、そういう意味のわからないことを言う。