揺れる、黒。



「そしたら夕陽がすごく綺麗で!

ねえ、だから今日はちょっと早めに部活切り上げて、土手を通って帰ろう。

で、綺麗な夕陽が見えたら写真撮ろう!」



べつに撮りたいものがあったわけではないから、僕は頷いた。



「うん、じゃあ、そうしようか」


「本当? やった!」



北原さんが言って、ガッツポーズをする。


北原さんの短い髪が揺れた。



僕は、下を向いて、カメラをいじっているふりをした。



北原さんの短い髪が揺れるのを見ると、僕はいつも、何か胸を締め付けられるような感覚になる。


何か言いたくて、でもそれは、今はまだ言えない。



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