揺れる、黒。
「小出くん、そろそろ行こっか」
「そうだね」
北原さんの言葉を合図に、僕らは部室を出た。
それぞれに自分のカメラを持ち、僕は自転車を押し、僕らは他愛のない話をしながら歩く。
北原さんは僕の自転車のカゴに鞄を突っ込んだから手ぶらだ。
終業後の時間でもなければ、部活終わりの時間でもない。
だから、帰り道に同じ高校の制服はあまり見かけなかった。
住宅街を抜けて見えた土手を、北原さんははしゃいだ様子で駆け上がった。
僕も自転車を押しながら、急いでその後を追う。
登りきった土手の上から見た景色は。
「……きれいね」
北原さんが、言った。