極甘上司に愛されてます


トイレから出ると、廊下の向こうから歩いてくる人影に気が付き、私は慌てて彼の元に駆け寄った。

昨日と同じ服……
本当に、朝まで一緒にいてくれたんだ……改めて、お礼言わなくちゃ。


「編集長!」

「……おお、起きたのか」

「はい。あんな場所だけどよく眠れたみたいです。……昨日は本当にご迷惑をおかけしました」

「別に迷惑だなんて思ってねぇよ。……ま、徹夜はさすがにキツかったけど」


編集長がぽりぽりと頭を掻きながら言ったその言葉に、首を傾げる。


「徹夜……? 寝てないんですか?」

「ああ。……誰かさんのせいでな」


誰かさん……って。この場合、私しかいない。よね。
もしかして……


「私、いびきかいてましたか……?」

「……ああ。そりゃもう豚のように」

「うそ……! す、すいません! 無意識とはいえ睡眠を妨害するほどだなんて……!」


豚ってことは、ぶひ、とかそんな下品な音立ててたんだろうか……

ぺこっと頭を下げると、上からおかしそうな笑い声が聞こえて顔を上げる。

な、なに……? そんなにみっともない豚だったの私……


「……嘘だよ。お前は静かにスースー寝てた」

「……! ちょ、ちょっと、ハメないで下さいよ!」


ああびっくりした。頭の中で一瞬豚の鳴き声がこだましちゃったじゃない。


「悪い悪い。すっぴんでもそんなに可愛いお嬢さんに豚はなかったな」

「すっぴん……あぁっ! あ、あんまり見ないで下さい!」


ある意味豚より恥ずかしい……!
さっき化粧落としたこと忘れてたよ~!


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