極甘上司に愛されてます





「わー、本当に来ちゃった。遊園地なんて何年振りだろう」

「さすがに混んでるな、連休は」


編集長のバイクの後ろに乗せられることおよそ一時間。

駐車場でバイクから降りヘルメットを頭から外した私は、入場門に続く階段をたどって視線を上の方に動かす。

ジェットコースターに観覧車、振り子のように動く海賊船。色々なアトラクションが見えるのと同時に、そこで楽しむ人々の賑やかな声が聞こえてきて、なんだかワクワクしてくる。


「……お前、こないだより騒がなかったな。バイクも慣れれば気持ちいいってわかったか?」

「え。……いや、うん……そうなんですかね、たぶん」

「なんだよその曖昧な返事は」


軽く笑う編集長にヘルメットを渡し、私はさりげなく自分の胸に手を当てる。

……そりゃあ、前回同様怖かったですよ。今日は高速も使ったから、むしろ前よりも怖かったかもしれない。

でも。編集長の広い背中につかまっていたら、怖い……っていうのより、なんか。

……胸の辺り、苦しくなっちゃって。


「じゃあ行くか。ここまで来たらフリーパスにするよな?」

「……あ、はい! 全アトラクション制覇してやりましょう!」


入場門に続く階段を二人並んで歩きながら、この息苦しさの理由を考えてみる。

普通に考えれば、罪悪感……なのかな。貴重なお休みを割いてもらっているわけだから。

それか、渡部くんとちゃんとお別れしたわけじゃないのに、男の人と二人で出かけてるからとか……?


「あ。……北見、あれ」

「あれ?」


園内に入るなり、編集長が“あれ”と前方を指差す。

そこには小さなワゴンが止まっていて、フリーパスを入れて持ち歩けるケースとか、この遊園地のマスコットのぬいぐるみが売っているようだ。


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