極甘上司に愛されてます
「……何か欲しいんですか?」
あそこに、編集長が欲しがるようなものが売っているとは思えないけど……
「買ってくるからここで待ってろ」
「え? ちょっと……」
行っちゃった……何を買うつもりなんだろう。
ワゴンに向かう彼の姿を何気なく見つめていると、途中で後ろ向きに歩いていた幼稚園児くらいの女の子が突然編集長にぶつかってきた。
よろけて地面に手をついてしまったその子に気が付くと、彼はすぐにしゃがみこんで助け起こし、その子の頭を軽く撫でていた。
すぐに駆け寄ってきたその子のお母さんらしき人がしきりに謝っていたけど、編集長は特に気にしてない様子で、女の子に向かって“ばいばい”と手を振っていた。
「……ああいうところ、やっぱり優しいよね」
迷い猫の“キャサリン”を探した時も、飼い主の兄妹に対して優しい態度を取っていた彼に感心したっけ。
……あ。もしや、私って、彼の目に“子供”として映ってるのかな?
だから放っておけなくて、つい面倒見ちゃう……みたいな。
そのセン、かなり有力そうだけど……ただ、キスの理由としてはちょっと……
「――ほら、コレ。お前の」
考え事をしていたら、そんな声とともに急に目の前に差し出されたピンク色のもの。
妙にふさふさして、暖かそうだけど……これは一体?