極甘上司に愛されてます
しかしいい大人の男女がかぶりものしながら手を繋いで歩くって、周りから見たらもうバカップル以外の何物でもないよね。
編集長はそう思われて困らないのかな……
ときどき彼の横顔を盗み見してはもやもやした気持ちを持て余しながら、最初のアトラクションの列に並ぶ。
どうやら最後に水を張ったプールに落ちるという遊園地では定番のジェットコースターのようで、並んでいると時々細かい水しぶきが飛んでくる。
「いやー、いくつになってもテンション上がるなーこういうのは」
バイクを乗り回すのが好きなくらいだから、編集長はやっぱり絶叫系の乗り物が好きらしい。
子供みたいに目を輝かせて、コースターが走るのを見守っている。
「……あ。これ、帽子はNGって書いてあります」
「マジか!? これで写真に写ろうと思ってたのに……!」
私が指差したアトラクションの注意書きを見て、頭を抱えそうな勢いで残念がる編集長。
それに“マジか”……って、ホントに子供に戻っちゃってるみたい。
しぶしぶ帽子を脱ぐ編集長……なんか、可愛いな。
ふ、と思わず笑みをこぼすと、繋いでいた手が一瞬緩んで握り直されるのを感じた。
指と指の間に入り込む、骨ばった感触。そして大きな温もりが私の手を包んだ。
「編集、長……?」
……これは、本当の恋人同士にしか許されない繋ぎ方なのでは……?
ていうか、ドキドキするから、困るんですけど……!
「……そうやって笑ってもらえると、連れて来た甲斐があるってもんだ。今日はとにかく笑え。笑ってりゃ悪いモンは全部飛んでいくから」