極甘上司に愛されてます
けれどそんな感動に浸っている間もなく、コースターは空の方に向かってゆっくりと動き出していた。
カタカタとチェーンが巻き上げられる音とともに、心拍数が上がっていく。
「……来るぞ?」
「~~~っ! い、いやぁぁぁぁ!!!」
ふっと重力がなくなったような感覚がして、私たちはものすごいスピードで下に落下していった。
――――そのあとはもう、なんていうか。
自分の絶叫と、コースターの轟音に支配された世界で、飛び出しそうな内臓を自分の中に留めておくのに必死で、最後の水浸しゾーンでびしょびしょになっても放心状態。
乗り物を降りると、編集長がおぼつかない足取りの私を引っ張るように歩いてくれた。
「お前……貞子みたいになってんぞ」
「え……」
そっか……どうりで前が見にくいと思った。
編集長があまりにクスクス笑うので湿った髪をかき分けて視界を確保すると、当たり前だけど編集長も濡れていて、短い黒髪に浮かぶ雫がきらきら光っていた。
うわ……さっきは子どもみたいにはしゃいでたのに、今や水も滴るイイオトコ状態。
ふいにそういうギャップ見せるの、やめて欲しい。
絶叫コースターからは降りたはずなのに、なんかまた動悸が……
「よし、次はアレだ」
「あ……待ってください!」
私たちはその後も、全部のアトラクション……とまではいかないものの、ほとんどのアトラクションを攻略していき、気が付けば日も暮れてきた。
夕焼けの中でベンチに座り、ソフトクリーム食べながらぼんやり休憩していると、なんだかふと、寂しい気持ちが湧きあがってくる。