極甘上司に愛されてます


「冴えない顔してどうした。もう疲れたか?」

「いえ……現実逃避もそろそろ終わりかと思ったら、なんかちょっと……感傷的になっちゃって」


日常に戻ったら、あとは脇目も振らずに仕事に打ち込めばいい。……っていうのはわかってる。

今までその邪魔をしていた恋愛のことを気にしなくてよくなったのだから、むしろ好都合じゃない……


「……溶けるぞ」

「え?」


その声で我に返ると、ソフトクリームのコーンをつかむ私の手に編集長の手が重なった。かと思ったら、そのまま自分の口に運んだ彼。

ち、近い……! そして勝手に口元に目が行ってしまう!

ワイルドな髭にふちどられたの形のいい唇が動いて、ソフトクリームを舐め取る仕草が妙に色気を帯びていて……


「も、もう全部あげますよこれ!」


ぱっと手を離して隣の編集長から目を逸らし、その手を自分の膝に置いて今にも姿を隠しそうな夕陽を睨むように見つめる。


「……何怖い顔してんだよ? 腹でも痛いか?」

「平気です……」


なんか、今日の私、おかしい……

失恋の痛みのほかに、別の痛みが胸の中で暴れている気がする。

遊園地という非日常的な空間にいたせい?

こんな痛みは、まるで――


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