極甘上司に愛されてます
「……いい感じに暗くなってきたな。そろそろアレ行こう」
あっという間にソフトクリームを食べきった編集長が、ベンチから立ち上がって高いところを指さす。
遊園地の中でひときわ大きく存在感のあるそれは、ライトアップされて華やかな光を纏っていた。
「あれならゆっくりだから怖くないだろ?」
「……はい。怖くは、ないですけど」
「けど?」
あんな狭いところに二人きりで入ったら、この胸の痛みが加速するような気がする。
もしかして……って思っている気持ちに、トドメを刺されてしまうかもしれない。
そうしたら、私。
またお気楽お花畑OLに逆戻りしてしまう可能性を、否定できない。
他でもないこの人に……そんな姿は見せたくない。
「……今日は、やめておきます。お土産買って帰りましょう?」
「どうしたんだよ急に。明日も休みだから、まだ時間は平気だろ?」
昼の賑やかさとはまた違う、色とりどりの電飾に彩られた遊園地を背にして立つ編集長のことが、ここへ来た時よりずっとカッコいい男性に見える。
それは、ムードに流されてとか、そんなんじゃなくて……たぶん、自分の瞳が、眼鏡を掛けたからだ。
甘い気持ちを胸に宿した時、誰もが自然と手に入れる、特別な眼鏡を。
「……そろそろ、現実に戻りたくなったんです」
それを掛けたままで、これ以上一緒にいたら、私、本当に……