極甘上司に愛されてます
11.甘い甘い12分間


眩暈がするような予告を受け、大きく一度高鳴った胸は、その後も休みなく速いリズムを刻んでいく。

芽生えた気持ちを肯定するように。
彼の言葉に応えたいと叫ぶように。

“だって私たち、年の差が”とか。
“上司と部下なのに”とか。

そういう言葉を挟む余地もないくらい、編集長の瞳は真剣な色をしている。


「……もう、遅いです」


観念した私は、蚊の鳴くような声で、ぼそっと呟く。

……気がついたのは、ほんの少し前。

それなのに、こんなに強い気持ちに成長してしまったことに、自分でもびっくりしているけれど。


「落ちてます。……私、とっくに」


あなたが素敵に見えるのは、恋をしたら手に入る眼鏡を掛けているからで。

耳の奥であなたの声がずっと響いているのも、恋心が勝手にそれを録音してしまうからで。

失恋で負った傷より、近くにいるあなたの香りに胸が疼いてしまうのも、きっと……


――私、懲りずにまた恋をしたから。


「……北見」


恥ずかしくて彼の方を向かないようにしていたのに、“こっちを向け”と言わんばかりに名前を呼ばれて、仕方なく横を向く。

すぐに私の瞳を捕えた彼の視線は炎を秘めたように熱く、じりじりと胸を焦がされそうな感覚に身動きが取れない。

そんな私に、編集長は少し傾けた顔をゆっくり近づけてきた。


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