極甘上司に愛されてます


え……? もう一周……って?

私がぽかんとしている間に、ガチャンと再び扉は閉まり、訪れた二人きりの時間。


「あの……」

「……今まで抑えてたって言ったろ? ……ほら、観念して目ぇ閉じる」

「え、ちょ、だってまだそんなに上でもないし――」


反論は無意味、というようにするりと髪が耳に掛けられ、私が逃げられないようにと後頭部で固定された大きな手。

至近距離で目が合って、深い黒色の瞳に吸い込まれそうな感覚に陥っていると、彼の顔が近づいてきて、私はまぶたを閉じた。

降りてきたのは、ちゅ、と優しく触れるだけのキス――
それだけで息が止まりそうになっていたのに、彼は角度を変えながら、何度も唇を押し当ててきた。


「……一周、12分だっけか」


一旦唇を離して、息のかかる距離で思い出したかのようにそう言った編集長。

12分……? そんなこと書いてあったような気もするけど、今、時間の感覚なんて……


「……足りねーな」


掠れた声で苦々しく呟いたかと思えば、また唇を被せられ、私の呼吸が遮られる。

苦しさから思わずゆるりと開いてしまった口の隙間から、柔らかくて濡れたものが侵入してくるのが分かった。

巧みな舌の動きに呆気なく絡め取られた自分の舌は、不器用ながらも彼のキスに応えようと必死になっていた。

……子供だと、思われたくない。

そんな意地を張って。

……でも。

そんな私より何枚も上手な彼のキスは、つまらない意地なんかあっという間に溶かしてしまうくらい、心地いいもので。


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