極甘上司に愛されてます
12.会社を襲った悲劇
「社員証……オッケー。式場の資料と下書き記事……オッケー。あとはお財布と携帯と……」
長かった連休が明け、久々の出勤となった週の半ばの木曜日。
未だ編集長とのデートの余韻から覚めやらぬ私は、持ち物を入念にチェックしていた。
早速忘れ物のひとつでもしようものなら、呆れられることは間違いなしだもんね……
「……よし。たぶん、平気」
メイクや髪型も“いつも通り”を心掛けて家を出ると、外はいいお天気。
あとは、会社で彼を見かけたときに動揺しないようにしなければ……なんて気を引き締めながら、朝陽の中を歩く。
……渡部くんには、いつ連絡しようかな。早い方がいいよね……明日の夜とか、誘ってみようかな。
でも、週末だから、和田さんと予定があったりするかな……
その二人のことを思うとやっぱりまだ憂鬱で、俯き加減のまま会社の前に着いた。
――その瞬間。
「え……?」
私は思わず声を洩らし、眉根を寄せて目を凝らした。
そして、そこに広がる光景が信じられなくて……呆然と立ちすくむ。
なに、これ……
見慣れた会社の建物――その一階に、大きなトラックが後ろ向きに突っ込んでいて、一階のほぼ半分と、トラックの荷台が、ぐしゃりと潰れていたのだ。
よく見れば、周囲にはパトカーが数台と警官が何人かいて、この惨状をメモに書きつけていたり、社員に話を聞いたりしていた。
異様な雰囲気の中、不安げにその様子を見守っている副編集長の佐藤さんの姿を見つけた私は、すぐに事情を聴こうと彼に駆け寄る。