極甘上司に愛されてます
「――まずひとつ目。報告、連絡、相談、以外の私語厳禁」
え……えぇぇ? なんですかそれ?
突如課せられたワケのわからない規則に、編集部も営業部も揃ってどよめいた。
けれど石神さんは臆することなく、言葉を続ける。
「そして、ふたつ目。特に編集部側。……部屋が汚すぎます。すぐに整理するように」
……ぐ。それに関しては何も言い返すことができない。
だいたいどの編集部員のデスクも、仕事上必要な資料や作成途中の記事が散らばっているのは言うまでもない。
だけど、その他にもお菓子や飲み物を広げていたり、特に女子の場合可愛い文具でデスクをデコっていたりして、ごちゃごちゃ感は確かにあるかも……
私と同じことを思ったらしい周りの同僚たちは、コソコソとデスクの整理を始める。
怒られているのは編集部の方だけ、というのもあり、編集長はどんな顔をしているのかとちらっと窺ってみると、気まずそうに自分の短髪を撫でている。
ちなみに隣の営業部長は、ちょっと誇らしげだ。……なんか、悔しいなぁ。
「それから三つ目ですが……」
……まだあるんですか?
少々うんざりしながらも石神さんに注目すると、彼はその美しい顔をさらに引き立たせるような微笑を浮かべ、こう言った。
「――上司と部下の恋愛厳禁」
……な。なんでそんなことまで、この人が……。
驚きと戸惑いを隠せず、思わず編集長の方を見つめてしまうけれど、彼はこのことをあらかじめ知っていたかのように、平然としていた。