極甘上司に愛されてます
「……でも。編集長なら亜子ちゃんを泣かせるようなことはしないわよ。ようは専務にばれなければいいだけだし」
「あの専務に“ばれないように”付き合うって、かなり難しそうですけど」
「まあ確かにね……いいじゃない、デートはずっとお互いの家でいちゃいちゃしてれば」
い、いちゃいちゃ……?
思わず編集長との“そういうコト”を想像しかけて、火がついたように頬が熱くなる。
一昨日、観覧車で交わしたキス……あれだけでも頭がくらくらして、溶けてしまいそうだったのに、色々と経験ありそうな十二個も年上の彼と、それ以上の……となると、もう考えただけで心臓が止まりそうだ。
「……その反応。編集長とはまだなのね、うわー、初々しい」
「か、からかわないでください……! 昼間に話すことじゃないですし!」
「ふふ、ごめんね。……でも、からかってるんじゃないのよ? ……本当に、羨ましいの」
そう言うと、ごちそうさま、と言って理恵さんは箸を置く。
明るい顔をしているけれど、今の“羨ましい”には何か翳りがあるような気がして、理恵さんに尋ねる。
「理恵さん……旦那さんと喧嘩でもしたんですか?」
「……ちょっとね」
理恵さんはあたたかいほうじ茶を啜ると、湯呑みに視線を落としたままで話す。
「いつからこうなっちゃったのかな……って感じなんだけど。最近何を話しても旦那が上の空でさ。おかしいなって思ってたけど、忙しさを理由にしてちゃんと向き合おうとしなかった。そしたらある日ね、私と、旦那の給与明細がテーブルの上に二つ並べてあったの」
「給与明細……?」
「そう。どういう意味なのかわからなくて旦那に聞いたら、“そんなに稼いでどうするつもりなんだ”って言われた。……よく見たらね、その月は私の方が多かったの、お給料」