極甘上司に愛されてます
……理恵さんはもう入社八年目くらいだったかな。
その勤続年数に加えて、営業部でもいつもトップかその次か、という営業成績だから、きっとそれがお給料に反映されているのだろう。
パートナーなら、それを一緒に喜んでほしいところだけど……理恵さんの旦那さんは、そうじゃないんだ。
「でも。もちろん生活費のこともあるけど、私は別にお金のためだけに働いているわけじゃないのよね。営業成績が伸びれば自分を認められてるって強く感じられるし、仕事にやりがいを感じてる。
亜子ちゃんみたいな可愛い後輩をからかって遊べるのだって、今の会社に勤めてなきゃできないし、毎日充実してるから辞める気なんてさらさらないのよね私は」
「……それを、旦那さんに言ったら、喧嘩に?」
「……ええ。今のままじゃ夫婦の時間が少なすぎる。辞めないにしてももっと仕事を減らして家庭のことも考えろって」
……なんか、私と、逆だな。
理恵さんはさしずめ、仕事80、家庭20のワーカホリック妻というところだろうか。
そういえば、前に給湯室で意味ありげなことを言っていたっけ。
無理して仕事と恋愛(家庭)を両立しようとしても、うまくいかない。自分がそうだから――って。
きっと、旦那さんとの心のすれ違いがあるこの状況に、理恵さんも苦しんでいるんだ。
「……どうして私に話してくれたんですか?」
食事を終え、空の食器が片づけられた綺麗なテーブルを挟んだ先の、どこか寂しそうな理恵さんに聞く。
今のって、極めてプライベートな……他人に話すには勇気のいるだと思う。
それを、私にどうして……
編集部の私に営業部の大変さはわからないし、何より私は理恵さんとは真逆のことで悩んでいるようなお気楽お花畑OL。
それを彼女自身知っていて、からかってくるくらいなのに……