極甘上司に愛されてます
「少しの辛抱だから……な」
そうして頭のてっぺんに温かいキスが落ちて来たけれど、私はいつまでもうつむいたままだった。
……編集長は、全然不安じゃないのかな。
勝手に不安がって落ち込んでる自分が、彼に比べてひどく子供に思える。
「じゃあ、お疲れ」
「……お疲れ様です」
給湯室の扉が閉まると、私はため息をつかずにはいられなかった。
それはもちろんこれから先が見えない不安と……それから自己嫌悪。
編集長を信じなきゃって思うのに、渡部くんのことがどうにもトラウマになっているみたいで、変な妄想を膨らませてしまった。
名前を呼んでくれないからって拗ねた顔もした。……ここ、会社なのに。
最後のキスは、きっとそんな私をなだめるために、仕方なしに与えられたもの。
……めんどくさい女。そう思われても、文句は言えない。
「……なんか、勝手に自爆しそう」
狭い部屋でぽつり、呟く私。
付き合ったばかりで、まだお互いのこと手探り状態なのに、あんな規則に縛られて……
編集長は何も悪くないのに、私一人でやきもきして、状況を悪化させてしまいそうで。
……ダメだ。脳がまた恋愛に侵されていく。
私は考えるのをストップして、とにかく家に帰って休もうと自分に言い聞かせ、給湯室を出た。