極甘上司に愛されてます
14.私にできること
「すごい数ですね…全部で何着くらいあるんですか?」
「常時1000着以上ご用意しております。サイズも豊富に取り揃えておりますので、お客様にも喜んでいただいてます」
「1000着……! 選びきれないなぁ……全部ステキで」
翌週、私は副編集長佐藤さんとともに、取材先を訪れていた。
明るい照明を反射する磨き抜かれた床。壁を覆うようにずらっと並んだ色とりどりのドレス。
女性なら誰でも入った瞬間にワクワするであろう広い衣装部屋を、ハンガーに掛けられたドレスを一着ずつ眺めながらゆっくりと歩く。
「……よろしければ、ご試着されますか?」
「え? ……いやいや、今日は仕事ですので……」
式場の衣装担当者の提案を私がやんわり断ると、後ろでカメラを構えていた佐藤さんが少し考えてから言う。
「着てみれば? “我らが編集部の北見も思わずテンションの上がる綺麗なドレスの数々!”とかって、写真と一緒に載せてみるのもいいかも」
「ええっ!? し、写真はちょっと……」
渋る私に対し、佐藤さんはにこにこしながらこんなことを言う。
「まあ使うか使わないかはクオリティ次第だから」
「……クオリティって、なんのですか?」
「きみのドレス姿」
佐藤さん……相変わらず、すがすがしい笑顔で毒を吐くなぁ。
つまり、大して見栄えのしないドレス姿なら、写真を使うのは却下ってことか。
……なんとなく悔しいけど、その方が好都合だ。写真が載るなんて恥ずかしいし。