極甘上司に愛されてます


「どど、どうぞ」


三日間悩んで書いたとはいえ、初めて作った企画書だ。きっと粗だらけのはず。

専務のことだから、問題点を一気に見つけて、ねちねちと攻撃してくるんだろうな……

その攻撃に耐えるべく、心に分厚めのバリアーを張っている途中のこと。


「……悪くないですね」

「へ……?」


予想外すぎる反応に思わず呆けた声を漏らすと、専務の瞳が綺麗な弧を描いた。


「もちろん私は“できない派”ですが」


……でしょうね。
心の中で盛大に頷いていると、専務は企画書を私の手に返して言う。


「……その考えを変えてくれる意見に出会いたいものです」

「考えを、変える……?」

「ええ。……本当は私にだって、ウサギをいじめる趣味はないんですよ?」


そう言って微笑まれても、私には意味が分からなくて首を傾げることしかできない。

ウサギって、誰のことを指しているんだろう?

ウサギ=弱いもの=彼の言う下々の者=私たち社員のこと、なのかな。


「ところできみは、なぜこの階に?」

「あ。編集長を探しているんですけど、どこにもいなくて……」

「ああ、彼なら会社のすぐ外にいますよ。何か女性と揉めている姿が専務室の窓からずっと見えていました」

「女性と、揉めてる……?」


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