極甘上司に愛されてます
パッとこちらを振り向いた二人。
編集長が少しきまずそうな表情をしているのも気になるけれど、女性の方と目が合うと、私は彼女から目を離せなくなってしまった。
この人、やっぱり――――。
「……北見」
「北見……北見亜子? この子がそうなのね?」
編集長が呟いた名に、食いつくような反応を見せた女性。
化粧映えする派手でキツめな顔立ち……そして表情にも敵意が滲んでいて、その迫力だけで負けそうになる。
私がたじろいでいるのを見逃さなかったらしい女性は、なぜか勝ち誇ったように鼻で笑うと、腕組みをしながら私の前に立ちはだかった。
「敵があなたなら話は早いわ。……こないだ、見てたわよね?」
……この人も、私を覚えていたんだ。
それに、敵って……私を編集長の恋人だと理解したうえで言ってるみたいだ。
あの時の痛みを思い出してここから逃げ出したくなるけれど、負けたくないと必死に足を踏ん張る。
心配そうな編集長の視線は、彼女じゃなく私の方を向いている。
……大丈夫。彼は私を裏切るような人じゃない。
ぎゅっと拳を握り、私も口を開く。
「見てました……けど。あれは、あなたの一方的な行為に見えました」
「あら、思ったより強気ね……。まぁ確かにあなたに見られてしまったキスは、そうだったかもしれないわ。でもね……」
彼女の余裕の表情を見ていると、次に飛び出す言葉がなんなのか、怖くて仕方がない。
編集長も何か不穏な空気を感じたらしく、眉根を寄せて言う。
「……何を言うつもりだ」