極甘上司に愛されてます
『陰ながら、応援してます』
それくらいしか言えないのが申し訳なかったが、美緒は嬉しそうに微笑んで、俺のために新しい酒を作り始めた。
結局それからも、俺は専務の動向を探るより美緒との世間話に終始してしまい、収穫はゼロだった。
店を出る頃にはすっかり上機嫌になった社長は、呼び付けたタクシーに一人で乗り、窓を開けると俺と専務に向かってこう言った。
『若い者はまだまだ眠くないだろう? あとは二人で楽しみなさい』
おいおい……三十半ばの男二人残して、何を楽しめって言うんだよ。
そう言いたいのを堪え、愛想笑い浮かべて社長を見送ると、キャバクラの店先で専務と二人きりになる。
……非常に、気まずい。でも、話をする絶好のチャンスだ。
『あの……もしよかったら静かなとこで飲み直しませんか?』
友好的に誘う俺に対し、専務は冷たい瞳で俺を一瞥すると言う。
『遠慮しておきます。あなたと話したいことは特にないので』
『……俺は色々専務に伺いたいことがあるんですけど』
俺だって本当は、アンタと話したくなんてないよ。
……でも、それを避けてたら先に進めない。
いつまでも北見の不安を解消してやれない。
専務は食い下がる俺を呆れたような目で見て、面倒そうに言う。
『……嫌です。とはっきり言えばわかってもらえますか?』