極甘上司に愛されてます
……こんな夜更けに、一人暮らしの女性の家に上がり込んでもいいものだろうか。
もちろん彼女をどうこうしようなんて気はないが、北見が知ったら悲しむようなことはしたくない。
そう思って外階段の前で立ちつくしていると、美緒が寂しそうに笑って言う。
『大丈夫です。五分で済みますから』
……五分。それなら立ち話でもいいじゃないかと思わなくもなかったが、美緒は身重だ。
冷たい風に当たって立ったまま話させるのも酷かもしれないと、俺は黙って彼女の後をついて行った。
洗濯機が通路に出してあるのを横目に見ながら案内された、二階の美緒の部屋。
俺の体がデカいせいなのか、入った部屋は歩くたびに床がみしみしと鳴る。
広さは六畳ほどのワンルーム。
その真ん中にある小さなテーブルの前に、俺は座った。
そして狭いキッチンでやかんを火にかけようとする美緒の背中に声を掛ける。
『……話が終わったらすぐ帰りますから、お茶とかいいですよ?』
『いえ、そう言わずに。すぐできますから』
……どうも五分じゃ帰らせてくれそうにないな。
家に上がったのは間違いだったか……?
そう思いつつも、朝から事故の処理や病院と会社の行き来で疲れがたまっていて、そのうえアルコールまで入れてしまった体が怠くて、立ち上がる気になれなかった。