極甘上司に愛されてます
「……今日、泊まっていい?」
ささやかれるように言われて、私はコクコクと頷く。
「う、うん……珍しいね、まだ週の半ばなのに」
「亜子が可愛いから」
「な、なに言ってるの……」
渡部くんがこんな風になるのって、すごく珍しい。
仕事で何か落ち込むようなことでもあったのかな?
そうだとしても、私とこうしてることが癒しになるのなら、すごく嬉しい。
「料理、あとにしよっか」
背中に密着したままの彼が言えば、私はその意味を理解してはにかみながら首を縦に振る。途端に、背後でエプロンの紐がするっと解かれるのを感じた。
「あ、あれ? ベッド、いかないの?」
「ん……たまには、ここで」
本当にどうしちゃったんだろう、今日の渡部くん。
焦ってるというか思いつめてるというか、とにかくいつもより余裕がないみたい。
それでも彼の気持ちに応えたくてされるがままになっていると、次第に思考能力が奪われていき、足元がふわふわしてきて。
今はプライベートな時間だから、お花畑にダイブしてもいいよね……?
誰に聞くでもなく、ただ自分で自分を許したくてそんな質問を投げかけると、頭の中になぜか蘇ったのは、さっきまで一緒だった面倒見の良い編集長が苦笑する顔。
う、なぜ今彼の顔が……なんだか少しだけ罪悪感……
「……亜子、好きだよ」
そんな甘い声で我に返った私は、渡部くんに気づかれないように小さく首を振ると。
編集長、ゴメンナサイ……!
なぜか脳内の彼にそう謝ってから、目の前で銀色に光るシンクのふちをぎゅっと握りしめた。