極甘上司に愛されてます
17.ネイルサロンの妖精
編集長との間が気まずいまま迎えた週末、日曜日の午後。
私は一枚の名刺を手に、あるネイルサロンを訪れていた。
きらきら輝く羽根飾りのインテリアや、淡いパステルカラーの壁紙を使った内装の店内は、【fairy】の名前通りに可愛くて幻想的で、一歩中に入ると落ち込んでいた気持ちが少し軽くなる。
「こんにちはー……」
一見店内には誰もいなかったけれど、私が声を掛けると店の奥から女性が出てきてくれた。
「あ、いらしゃい! 来てくれてありがとう。座って座って?」
親しげな笑みを浮かべるオトナ系美人の彼女は、このお店の店長兼オーナー。
そして何を隠そう編集長の元カノ、鹿沼留美さんだ。
前に一度会った時には下ろしていた長い髪を、仕事中だからかポニーテールにしている。
どんな髪型でもキレイで似合っていて、もちろんネイルも凝っていて、思わず見惚れてしまう。
わざわざ電話で予約を取ってきたのは自分だけれど、留美さんの洗練された雰囲気がまぶしくて、なんだか卑屈になってくる。
……私なんか、どう頑張っても留美さんのようにはなれないよなって。
「今日は、どんな感じにしたいとかある?」
ゆったり背中を預けられる座り心地のいい椅子に腰かけると、早速留美さんが聞いてくる。
「あ、あの……大人っぽいネイルにしたいです。仕事にも差支えないくらいのデザインで」
私が希望を伝えると、留美さんはうーんと考え込む。