極甘上司に愛されてます
……え。ええぇぇ? な、なんで急にそんな単語が……!?
店内に他にお客さんはいないけれど、まさか留美さんの口からそんな言葉が飛び出すとは思わず、顔がかぁぁ、と熱くなるのを感じる。
「ははーん……その反応、やっぱり二人はまだだったか~」
「か、からかわないでください……っ」
……って。このやり取りどこかで最近やったばかりのような……
確か、相手は理恵さんだ。
それにしてもみんなどうして私と編集長が“まだ”だって気づくんだろ……うぅ、謎だ。
「少しくらいいいじゃない。あなたたちも、私のこと騙してたでしょう?」
猫のような瞳ににらまれて、はて、と首を傾げる。
留美さんを騙した……? そんな記憶、どこにも―――――あ。
「今日の北見さんの話聞いてたらわかったの。まだ、婚約者って感じじゃないなぁってね」
「す、すいません……あの時は、編集長が付いた嘘に付き合うのがいいと思って、婚約者のフリを……」
「謝らなくていいわ。実際、私もあれで救われたもの」
「……それなら、よかったです。やっぱり優しいですよね、編集長……そういうところが、好――」
呟いてしまってから、はっとして留美さんの方を見る。
彼女は私から目を逸らして、肩を震わせながら笑いをかみ殺していた。
「……あー、ホントに可愛いわね北見さんって。彼を信じられないって悩んでいても、結局今のがあなたの本音なのね」
「いや! あの、違うんです! 今のは、つい……」
「“つい”出ちゃうならなおさらよ。もう、賭けは私が勝ったも同然ね」
「それはまだわかりませんって……!」
……なんか、留美さんには恥ずかしい姿を見られてばかりだ。
早くネイル乾かないかな……たぶん顔真っ赤なのに、ちっとも隠せやしないよ。