極甘上司に愛されてます
「そろそろいいかな……これね、北見さんをイメージしたのよ?」
「ええっ? 私、こんなに可愛くない……!」
「ふふ。言ったでしょ? “透吾の趣味なら任せて”――って」
編集長の趣味……それが、私ってこと?
る、留美さん、また私のことからかってるでしょう……!
理恵さんといい留美さんといい、私って年上の女性におもちゃにされる体質なんだろうか……
そんな自分をちょっと呪いつつ、両手を開いて完成したネイルを眺める。
「ありがとうございます……本当に、かわいい」
「そう言ってもらえるのが一番うれしいわ。頑張ってね、あなたたち、お似合いだからきっと大丈夫」
留美さん……
いっぱいからかわれたはずなのに、最後にそんな優しい言葉を掛けられて、思わず胸がじんとなった。
やっぱり、編集長が好きになった女性だもん。……素敵な人だ。留美さんは。
「……今度、彼ときちんと向き合ってみます」
爪の先から勇気が湧いてくるような気がして、私は拳をぎゅっと握って留美さんに宣言した。
優しく微笑んでくれた彼女に別れを告げ、お店を出てからもう一度振り返って【fairy】の看板を見上げる。
……今日、ここにきて本当によかった。
女の子の爪に魔法を掛けて、可愛さと勇気をくれる、本物の妖精に会えたんだもん。
まだ何も解決してはいないけど、お洒落な爪を誰にも見せず帰るのも寂しい。
そう思った私は、近くのお店で少しショッピングしてから帰路についた。