極甘上司に愛されてます
18.給湯室でキスをせがまれたら…
「――北見。二か所誤字があるけど、あとはこれでいい」
翌日、お昼休みを控えたオフィスで、金曜に渡してあった原稿を確認し終えた編集長が、私の席まで来てそれを返してくれた。
「あ、ありがとうございます」
「……それと。ちょっと来い」
そっけない声で言うと、私がついてくるかどうか確認もせずに編集部を出て行こうとする編集長。
……な、なんだろう。怒ってるのかな……
だとしたら、仕事のこと? それとも、ついに別れ話……とかだったらどうしよう。
どっちにしろ、私だって彼と二人で話したいと思っていたんだ。
もう、逃げちゃダメ……
意を決して廊下に出ると、給湯室に入って行く編集長の大きな背中が見えて、私もそこに向かう。
そして狭い部屋に入ると、私を待ち受けるように腕組みをして立つ編集長がいて、何を言われるんだろうと身を固くする私。
今までにも何度かここで彼と向かったことがあったけれど、今日はその中でも一番空気が重くて息苦しい。
「あの……」
数秒の沈黙の後、気まずすぎて先に声を発したのは私。
床に視線を落としていた編集長の鋭い瞳が私に向けられ、ドキン、と胸が跳ねる。
……怒られる? 責められる?
それとも……フラれる?
色んな憶測でぎゅっと締め付けられる胸に握りこぶしを置くと、近くで衣擦れの音がして――
ゆっくり背中に回された腕が、私を強く抱き寄せた。