極甘上司に愛されてます
「……編集、長……」
あ……どうしよう。
編集長の香り、こんなに近くに感じるの久しぶりだから……離れたくない。
おずおずと、彼の背中を下からたどるように私からも腕を回すと、スーツの背中をつかんで、温もりを確認する。
きっと……ううん、絶対に。
妊娠の話は、何かの間違いだ……
今まであんなに信じられなかったのに、耳元に感じる彼の鼓動を聞いただけで、私には本能的にそう思った。
「不安にさせて、悪かった……」
すると、後悔の滲んだ優しい声が降ってきて、私は胸にぴたりと寄せていた顔を上げる。
絡んだ視線の先にある彼の瞳は、言葉を使うよりも饒舌に、私に対する想いを語っていた。
「……本当のこと、教えてください……」
今の私なら、それが聞ける。信じる心が戻ってきた、今なら。
彼の目をじっと見つめて、真剣に問いかけると。
「……細かい事情はあとで話す。けど、俺はあの女と男女の関係になったことは一度もねぇよ。信じてもらえるかわからないが、それが真実だ」
……わかってた、はずなのに。
この人がそんなひどいことするなんてあり得ないって……
「疑って、ごめんなさい……」
安心と、申し訳なさと……それから今まで抑え込んでいた愛しさが一気に溢れてきて、じわりと浮かんできた涙を隠すように、編集長の胸に顔を押し付けた。
……好きなのに。大好きなのに。
こうして本人の口から聞くまで、私。
こんなにも不安だったんだ……