極甘上司に愛されてます
「……まだ、捨ててないよな?」
「え……?」
「もう“恋なんて要らない”って言ってただろ。……それとも俺とのことなんてもうとっくに捨てて、燃やされて、灰になったか?」
私はその言葉に、思いきり首を横に振った。
だって……簡単に、捨てられないから恋なんだ。燃やされて灰になるどころか、火種のような強い気持ち。
こんな気持ちを教えてくれたのは、他の誰でもない編集長。
それまでは、仕事のために恋を捨てようなんて、できっこないことを試みたこともあったけど――。
「……大丈夫です。捨ててません。捨てる振りして、ずっと、大事に、持ってたんです……」
泣き顔のまま笑顔を作ってみせると、編集長が、私の額と自分のそれをくっつけて、瞳を覗き込みながら話す。
「……今、昼休みだよな?」
「そう……だと思いますけど」
「誰かコーヒー入れに来ると思うか?」
「…………可能性は、あるかと」
一瞬黙って何かを考えたらしい編集長だけれど、一度大きく息を吐くと、私の顔を両手で包み込んだ。
……わ、わ。もしかして、キス……?
ぶわっと顔に熱が広がり、けれどしっかり私の顔を支える大きな手から逃れることはできずに、ぎゅっと目を閉じる。