極甘上司に愛されてます
「あの時、お前に、幸せな恋をさせてやるって思ったんだ。……だから、そんな顔されると俺が困るんだよ」
両手で頬を包み込んで、彼が私に言う。
……そんなに前から私を見ていてくれたなんて、知らなかった。
それに、いつも優しくて余裕たっぷりで、何事にも動じないように見える編集長が、こんな私の一挙一動で困るなんて、本当?
「……編集長」
「ん?」
首を傾げた彼にほんの少しの隙を見つけると、私はかかとを上げて素早く彼に口づけた。
自分からキスをするなんて恥ずかしくて、ほんの一瞬しか唇は重ならなかったけれど、不意を突かれて目を見開く彼を見ると、さっきの彼の言葉が嘘じゃないとわかった。
……本当に、困ってる。
余裕のないその姿が、すごく愛しい。
「帰らないで……ください」
私の口から、ようやく素直な気持ちがこぼれた。それを聞いた編集長は、静かに頷く。
「もう、頼まれたって帰ってやらないからな」
「大丈夫です……」
「……亜子」
「編集……ちょ……」
お昼休みの給湯室、それからさっき雨の中でしたのとも違う、貪るようなキスが降ってきて、私の心拍数と体温が一気に上昇する。
今までの彼がどんなに紳士的だったかを思い知らされるような、甘くて濃厚で、激しい唇と舌の戯れ。
もう頭では何も考えられなくなって、彼の腕にしがみつくのが精一杯。
そんな言葉通り骨抜きな私の体を、編集長は傍らのベッドにそっと押し倒す。