極甘上司に愛されてます


小林先生とのアポは、夕方に取ることができた。

それから午前中は黙々と、来週発行分の記事の整理に追われ、休憩をはさんで午後には小会議室で企画会議が行われた。


「来月の企画の目玉だけど――」


ホワイトボードの前の椅子に座り、キュ、とペンを鳴らして文字を書いていくのは、副編集長の佐藤慶介(さとうけいすけ)さん。

テキパキ司会進行をこなす彼は、編集長と同い年だけれど見た目は全く逆。

編集長が悪ガキなら、佐藤さんは知的メガネの優等生ってとこだろう。

けれど冷たい印象は全くなく、結婚していて子供も二人いる彼は、物腰も柔らかく優しい上司だ。

そんな彼がペンを止めると、そこに書かれた文字はこうだった。


【秋のハッピーブライダル】


ブライダル特集……?
私は説明を聞く前から、その企画に少し疑問を感じて手を挙げた。


「ブライダルは六月にやったばかりじゃないですか。もっと新しい企画にしなくていいんですか?」


周りの先輩たちも同じことを思ったらしく、小さく頷きながら佐藤さんの顔を見る。


「それはもっともな意見なんだけど、六月以降ににオープンしたいくつかの新しい式場から、宣伝して欲しいと強い要望があってね。それと、ジューンブライドの時期は日本では梅雨だし、気候のいい秋に式を挙げたい人って意外と多いらしいんだ」


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