極甘上司に愛されてます
21.必死で、恋をする
それからおよそ二週間が過ぎ、スケジュール帳の24がハートマークに囲まれた、恋人たちにとって特別な日がやってきた。
思わず朝から浮き足立ってしまいそうになるけれど、社会人にとって日中はいつもの平日と同じ。
取材に出かけている同僚も多く、空席の目立つ編集部の中で、私はデスクワークに勤しんでいた。
「すいませーん、荷物の受け取りをお願いできますか?」
そんな中、宅配便のお兄さんがオフィスの中にやってきて、大きな荷物を手にキョロキョロと対応してくれる人を探していた。
「あ、ご苦労様ですー」
パッと席から立ち上がりオフィスの入り口まで行くと、お兄さんの差し出す伝票に受け取りのサインをして、平たい四角型の段ボールを受け取る。
わ、思ったより重い……中身、なんだろう?
よろめきながら編集長席に荷物を持って行き、そうっと机に立てかけたところで、ちょうど彼が会議から戻ってきた。
「……あ、編集長。なんですかこの大きな荷物」
「ああ……本当に送って来たのか。開けていいぞ、中身は伝票見りゃわかんだろ」
「伝票……え、小林先生から……?」
しかも、品名は“絵画”……なんで、あの人の絵がウチに送られてくるの?
「……例の件で、俺に迷惑をかけたっつーのを詫びたいらしい。で、“どうせならクリスマスプレゼントとして送るから、きみの職場に飾って皆をハッピーにしてくれ”……っていうメッセージがさっき留守電に入ってた」
「へ、へえ……」
自分の絵で皆がハッピーになると思い込めるだなんて、小林先生のちょっと独りよがりなアーティスト気質は相変わらずだな……
なんて失礼なことを思いつつ、私は厳重な梱包を解いていく。