極甘上司に愛されてます
あ……確かに。去年招かれた二組の結婚式、両方とも十月だった。
同じ月に呼ばれちゃうとご祝儀で懐が寒くなって、その月は普段より節約を心掛けた覚えもある。
「秋は料理にも力が入るし、六月とはまた違ったアプローチの仕方もかなりあるはずだ。それを、これから皆で詰めていきたい」
なるほど……
佐藤さんの言葉に納得した私は、早速“秋らしい結婚式”について思いを巡らせてみる。
澄んだ秋空の下のガーデンチャペル。
秋の味覚をふんだんに使った料理は、日本料理でも西洋料理でもきっと彩り豊か。
暑くも寒くもない気温だから、招待客も思いっきりお洒落な格好ができるし…
それから当然思い描くのは、幸せそうな花嫁と花婿。
けれどのっぺらぼうではイメージが膨らまないので、手っ取り早く自分の顔と、それから渡部くんの顔を当てはめて……
“――亜子。一緒に幸せになろう”
ああ……いい。絶対いい。
爽やかな彼には、白いタキシードを着てもらおう。それで、私のドレスは……
「ちなみに担当者だけど、六月の記事を書いた人とは別がいいと思うんだ。その中で今連載を抱えてないのが北見さんだけなので、お願いしてもいいかな」
佐藤さんの声で、完全に本来の職務から脱線した妄想から一気に現実に引き戻された。
「え! わ、私でいいんですか!?」
日ごろから記事を書いているとはいえ、私の担当はいつもメインからは外れた小さなスペースの記事。
月の特集ってことは、四週連続で一面を飾るウチの新聞の花形記事じゃ……!