極甘上司に愛されてます


私が追いかけようとすると、トトッとしなやかな動きで逃げてしまう黒猫。


「あ、あの、一旦切りますね! もしかしたらキャサリンちゃんがいたかも!」

『……本当か? 俺も後で合流するから、とりあえず後を追ってくれ』

「了解です!」


早いとこつかまえて、クリスマスデートきっちり楽しみたい……!

そんなあからさまな下心から、さっき猫が姿を消した方向へる走っていく私。

そうして猫を追っていると、小さな背中はぴょんと路地に入って見えなくなってしまった。

逃がすもんですか……!

もはや意地でも捕まえてやるという気持ちで私も路地へ入る角を曲がると、


「わ!」


正面からドスンと何かにぶつかって、私は後ろに転びそうになってしまった。


「……大丈夫ですか?」


けれど転ばずに済んだのは、大きな白い袋を持った特徴的な赤い服のおじいさんが私の腕を引っ張っていてくれたからだった。


「あ、ありがとうございます……サンタ、さん?」


……どこかのお店の宣伝目的でコスプレさせられてるのだろうか。

それにしては看板も何も持ってないし、住宅街の細い路地にいるなんて何か不思議だけど……

しかも、彼が掛けている眼鏡、どこかで見覚えがあるような……


「……お嬢さん、黒猫をお探しですか?」

「え? あ、はい!もしかして見かけたんですか!? どっちに向かったか教えてください!」


サンタさんの中身も気になるけれど、私はとりあえず猫の行方を必死になって聞いた。




< 234 / 264 >

この作品をシェア

pagetop