極甘上司に愛されてます


「……明るい。中に誰かいるのかな……」


ステンドグラスから洩れる照明に目を細め、建物のすぐそばまできたところで足を止める。

照明がついているってことは、もしかして式の最中?

最近はナイトウェディングも人気だって、取材の時に話に出たような気がする。

だとしたら、そこにズカズカ乗り込んで行ったら、式をぶち壊しちゃうことになるし……

どうしよう、としばらくその場で悩んでいると、ギイ、と重たい扉の開く音がした。

参列者でもないのにここにいたらマズイ!

そう思って一度はその場を離れようとしたものの、どうも違和感を感じた私は、開かれたチャペルの入り口にじっと視線を注ぐ。

けれど、いくら待っても新郎新婦が出てくる気配はなく、拍手も音楽も聞こえない。


「……なんなんだろ」


急にいなくなった猫。怪し過ぎるサンタクロース。そして、明るいのに静かなチャペル。

私……クリスマスイブだからって、変な幻でも見てるのかな。

首を傾げながらも、開け放たれたままの扉に引き付けられるようにして、私はチャペルの中へとゆっくり足を踏み入れる。

――――バタン!

その瞬間、まるで私をここから出さないようにするみたいに、扉は外から勢いよく閉じられてしまった。


「な、なんで……?」


思わずこぼれた自分の声が、高い天井に反響するようにして、大きく聞こえる。

まさか、何かの怪奇現象? やだ、私絶叫系も苦手だけど、お化け系も断じて好きじゃないよ~!

一度びくびくしてしまうと、祭壇の方なんてまさに西洋のお化けでも出そうな気がして、なかなか振り返ることができない私。


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