極甘上司に愛されてます
この次は、きっとアレだ……
勝手にパイプオルガンが鳴り出して、私は悪魔か吸血鬼にさらわれるんだぁぁ!
半分泣きそうになりながら、両手で耳を塞いだ私。
すると、コツコツと、こちらに近付いてくる足音が聞こえて……ぽん、と肩に誰かの手が。
「お前、なにびびって――――」
「きゃぁぁぁ! 許してぇぇぇ! 」
お腹の底から叫ぶと、お化けの手はビクッと震えて私の肩から離れていく。
とりあえず、さらわれずに済んだみたい……?
……でも。今聞こえた声って、お化けと言うよりは人間の……というか、知り合いの声、だったような。
おそるおそる首を後ろに回転させると、片方の耳に人差し指を突っ込み、しかめっ面をしているワイルドイケメンなお化けの姿……
って、お化けじゃないし!
「へ、編集長……!?」
「お前な……鼓膜破れるとこだぞ」
「だ、だって、お化けかと思って……!」
「失礼な。自分の恋人をバケモン扱いか」
……なんだ。よかった……一気に肩の力が抜けて、はぁ、と息をつく。
編集長は不服そうな顔をしているけど、安堵の気持ちで胸がいっぱいになった私は、彼の方へゆっくり近付いて行って、ぼそりと呟く。
「……逢いたかった、です」
そして、迷子の子がお母さんを見つけたみたいに、涙を滲ませながら。
彼の広い胸に、自分からぎゅっと抱きつく。