極甘上司に愛されてます


ラッピングを解く彼の手元を見ながら、どんな反応をしてくれるだろうと、ドキドキしながら待つ。

そして箱から顔を出したボトルを手にすると、編集長が私に尋ねる。


「……お、香水。これ、お前が好きな香り?」

「はい……今つけてる香りも好きなんですけど、たぶんメンズですよね? これはユニセックスなので、もしも嫌じゃなければ、一緒に、同じ香りつけられたらなって……」


ああなんか、プレゼントを選んだ理由とか話すのすごい恥ずかしい。

……でも。編集長を好きになって改めて、恋が“五感”に及ぼす影響力って言うのをすごく感じていて……中でも嗅覚は、飛び抜けて敏感になってると思うのだ。

すれ違った彼の香りを嗅いだだけで、私の胸はいつだって甘く疼くから。

だから、もしも家で一人過ごしていて寂しくなった時も、同じ香りを纏っていれば、少しは心の隙間が埋められるかも、なんて……

遠距離恋愛でもないのに、ちょっと重い、かな……?


「……いいな、それ。あまり考えたことなかったけど、見えないところで同じもの身に着けてるって、なんつーか……エロくて」

「そ、そういう理由じゃないんですけど!」

「……わかってるよ、ありがとな。毎日つける」


くしゃっと頭を撫でられると、それだけで何もかも許せちゃうような気がする。

今さらだけど、相当好きになっちゃってるみたいだ……私、編集長のこと。


「お前は、開けないのか?」

「――あ、開けます! なんだろ、すごい大きいけど……」


ガサガサと袋を剥いで、中の箱をパコ、と開いてみる。

そこから覗くのは、大きくてツルツルした丸いもの……これは、もしかして。


「――ヘルメット!」



箱からスッと引き抜いて、両手に抱えて持つ。

その柄は、ピンク地に、可愛いウサギのイラスト。


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