極甘上司に愛されてます


……これは絶対、私が後ろに乗るとき用だ!


「かぶっていいですか?」

「え、今か? ……別にいいけど」


かぽ、と頭を差し込んで、「どうですか?」とうきうきしながら聞いてみる。

バイクに乗るのは怖いけれど、自分の好きな物を私と一緒に楽しもうとしてくれていることが嬉しくて、自分でもびっくりするくらいにテンションが上がっている。


「……まあ、普通に似合うけど」

「なんですかその気のない褒め方は!」


なぜか喧嘩腰の私に苦笑すると、編集長は独り言のように呟く。


「いや……だって、それはダミーっつーかオマケで、本物は―――」


私の頭からヘルメットを外すと、胸ポケットをごそごそとしてそこから何か出したらしい彼が、私の目の高さで拳を握った。


「手ぇ出してみ」

「……手?」


昔通っていた保育園でおやつをもらったときのように、両手でお皿を作って落ちてくるものを待つ。

あのおやつって、誰のチョイスなんだか知らないけどたまにすごく渋くて、夏の暑い時期に“あずきバー”だった時はショックだったな……今なら好きだけど、あのアイス。

なんて、幼き日の切ない思い出に想いを馳せていたら、目の前をキラキラ光るものが落ちて行って。



「………………こ、れは?」



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