極甘上司に愛されてます
誰かの落とし物?
落し物なら、警察に届けなきゃいけないって、いいオトナの編集長なら知ってますよね?
宝石なんてあまり縁がない私にでも、まばゆい光りを放つ粒がダイヤだということくらいはわかる。
そして、そんなものがついている指輪はきっと、エンゲージリングってやつだろう。
……落とした人、きっと困ってますよ?
「あの……これはどなたの」
「お前それ、わざとボケてんのかよ。……今の発言を佳子ちゃんが聞いたら怒るぞ」
「佳子? なんで佳子の名前が」
「……お前の指のサイズ、わかんねぇから聞いたんだ。合コンの時、連絡先聞いてあったから」
……お前の指のサイズを聞いた。妹の、佳子に。
そして、この手の中にあるのは、まるでエンゲージリング。
……ってことは?
「……まーだ間抜け面してんな」
「だ、だって……え? 全然、理解できなくて……」
「じゃあ、こう言えばわかるか?」
私の手の中の指輪をスッと取り、それからつかんだ私の左手薬指に器用に嵌めた彼。
や、だから、落し物で遊んじゃだめですってーー!
困惑しながら彼を見つめると、その先で視線が絡んで、ドキ、と胸が音を立てる。
彫りの深い目元。その中にある漆黒の瞳から、目が離せない。
そして次の瞬間、私の肩は彼の大きな手に包み込まれていて。
「亜子。――お前のこと、一生幸せにする」
……これ、あの日と、同じ……
ーーううん、違う。
言葉は、同じだけれど。
それが心に染み込んでいく速度も範囲も、前とは比べ物にならないくらいに大きくて……